自分一人の働きで何人の米を食わせられるかちゅうのが基本や
西岡常一棟梁が農学校時に聴いた、校長先生の言葉に感銘を受けたのでメモしました。
ここの校長先生は偉い人でしたな。
農業経済という時間には「最小の労働をもって、最大の効果を生む。これが基本や」と習いましたんです。
教科書にもそう書いてありました。その時分、修身という時間がありまして校長先生が来たんですな。それでこういうんですわ。
「おまえら、農業経済学ちゅうのを習ったやろ」
「はい、習いました」
「最小の労働力をもって、最大の効果を生むと習ったやろ」
「はい、そうです」
「それは大きな間違いやねん。あれは西洋式の考えや。われわれ日本の農民は、自分一人の働きで何人の米を食わせられるかちゅうのが基本や、そういうふうに学問せないかんよ。本に書いてあることを丸暗記したらあかん。そやけど試験のときは本に書いてあるとおり書いておけ。わしの言うことは書かんでもええ」
「木のいのち 木のこころ」西岡常一 P124