自然と密着した生活と仕事

西岡常一棟梁の言葉をメモ。「自然と密着した生活と仕事」のものの考え方に惹かれました。

ちょっとした気配りのなさが、これまで生きてきた木の命を無駄にしてしまうことになるんやから、われわれは十分に考えななりませんわ。

こういうことは農学校を出て、一、二年、百姓をやらされて初めてわかりましたな。自分で育てたものは無駄にしませんし、植物は育てるのにえらく手間やら時間やらがかかるんです。

また手をかけただけ大きくなるんですな。そして植物が育っていく、その一つ一つの段階にそれなりの歴史があるんです。

それに自然には、急ぐとか早道みたいなもんはないですからな。人間がいくら急かしても焦っても、自然の時の流れは早ようなりませんのでな。急いだら米は実らんし、木は太うならん。

昔の宮大工が百姓大工やったというのは理想的な姿かもしれませんな。自分で米や野菜を作って、仕事があるときに精一杯やる。自然に密着した生活と仕事、こんなやったら自然のことは決して忘れはしませんわな。

それと百姓大工をしたら食えるから待つこともできますわな。一度余裕をなくして儲けを追い出したら、時間を待つこともできんし、休むこともできん。どうしても「早く、早く」ということになりますな。

まぁこんな時代ですが、ちゃんとした仕事をしようと思ったら自然のことを忘れたらあきませんわ。どんなにしても人間は自然から逃れませんし、その自然の中では木や草とそんなに変わらんのやから。

「木のいのち 木のこころ」西岡常一 P54

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